オープンハウスグループが日本一を実現するために。
従業員の多様な事情に寄り添った新しい介護支援制度

  • #介護支援制度
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2023年9月期に売上高1兆円を超えたオープンハウスグループ。多様な働き方を推進し、「やる気のある人を広く受け入れ、結果に報いる組織を作ります」という創業当時から大事にしている価値観を体現しようとしています。その一環で、2024年4月には「ワークデザイン推進委員会」が設置され、「女性活躍推進」「障がい者雇用推進」「介護支援」という3つのワーキンググループが発足しました。

今回は、「介護支援ワーキンググループ」について取り上げ、さらなる高齢化社会を迎える日本における「介護支援」の重要性と、このようなグループが立ち上がった背景や狙い、今後の展望などを、オープンハウスグループ 営業本部 部長 兼 介護ワーキンググループ 町田 光央と、人事部長 山根正義 に聞きました。

営業本部
2007年中途入社
営業部長
町田 光央Mitsuo Machida

東京都出身。駒澤大学経営学部卒業後、2003年に新卒で車の販売会社に入社。2007年7月にオープンハウス戸建関連営業部門に入社し、2015年1月に部長に昇進。2015年10月に土地仕入部門に異動する。2019年1月に戸建関連営業部門に戻り、2019年1月東京エリアの営業部長に昇格し、現在に至る。

人事部
2022年中途入社
人事部長
山根 正義Masayoshi Yamane

京都府出身。神戸大学経済学部卒業後、2014年に新卒で国内大手生命保険会社に入社。営業職を1年経験後、一貫して人事職に従事。2022年4月にオープンハウスグループ人事部に課長職で入社。2024年4月に人事部長に昇格し、現在に至る。

※役職は2025年1月時点のものになります。

新卒1期生世代が45歳を迎える今こそ、これから起こる介護問題へ対処を

――「ワークデザイン推進委員会」の発足の背景や、介護支援を重点項目にした理由について教えてください。

山根:もともと当社は「やる気ある人を広く受け入れ、結果に報いる組織を作ります」という標語を掲げている、許容度が非常に高い会社だと思います。ただ、女性はライフステージの変化で、一時的に働けない時期がありますし、男女問わず親の介護などでキャリアが分断されざるを得ない状況は現実としてあります。そこも含めて、やる気ある人に対して会社として支援したいと、これまでも女性活躍推進や障がい者雇用推進を進めてきました。ただ、それぞれが個別に取り組んでいる状況だったので、全社的に重点取り組み項目をきちんと設定した上で進めていこうと、「ワークデザイン推進委員会」をこのたび立ち上げたのです。

どの項目を重点取り組み項目にするかについては、社長とも議論を重ねました。新卒1期生世代が45歳という年齢に差し掛かるので、従業員の親の高齢化は今後、避けられないわけです。喫緊の問題ではなくとも、いずれ介護の問題は必ず顕在化していきます。そこで今回、女性活躍推進や障がい者雇用に加えて、介護支援領域も重点取り組み項目に設定しました。

町田:現在採用に力を入れていますし、こういう支援制度は当然あった方がいいと思います。オープンハウスグループが日本一を目指すのであれば、こういった支援制度がないと他の大手企業には勝てないのかなと感じますね。

山根:介護は多くの方が直面し得ることです。しかも、多くの場合が”突然”介護が必要になります。親が要介護になったとしてもキャリアを諦めず、仕事を辞めるという選択肢を安易に取らずに働き続けられる環境を整えるというのは、当社が日本一を目指す上で必要なものだと思います。

介護が始まってすぐに受けられる、類を見ない手厚い5つのサポート

――2024年10月から始まる介護支援の内容について、詳しく教えてください。

山根:ひと口に介護と言っても、さまざまなケースがあります。実際に介護されている方々にヒアリングをしたのですが、異口同音におっしゃるのは、「休みが1番困った」ということでした。そのため、介護に直面した際に最大20日間の有給休暇を付与する「介護スタート休暇 」を設けました。具体的に説明すると、例えば親が倒れたら介護認定の取得が必要になりますよね。介護認定を取得するには、行政に届け出て、「要介護2」や「要介護3」の判定をしてもらい、その結果を持って、ようやく介護保険が適用されるようになります。

町田:介護認定を取得できるまで1カ月ほどかかるみたいですね。

山根:そうなんです。ですが、介護する側はそんな認定なんて待っていられないわけです。そこでこの「介護スタート休暇」は、とにかく申請したら、すぐに有給休暇を付与するという制度にしています。この休暇期間で介護体制を整えてもらうことを想定しています。

その後、介護がスタートしたら、会社を辞めるのではなく、働きながら介護を続けてもらうために、「介護サポート勤務制度」を設けています。これは労働時間を短縮できる制度です。
また、「介護ケア休暇」として、年10日間の特別休暇(有給)を付与します。行政は土日には対応していないものも多々ありますので、平日にお休みを取って行政手続きができるようにすることを想定しています。また、遠方の家族の介護については、「介護帰省旅費」で帰省のための往復交通費を支給します。その他、「介護支援手当」という形で、介護が必要な家族を抱える方に金銭的支援として最大月5万円を会社が支援するという、制度になっています。

町田:驚くほど手厚いですよね。

山根:そうなんですよ。制度の内容については社長ともいろいろと話したのですが、社長はいつも私たちの想定を超えてきますから。最後の「介護支援手当」はまさにそれです。私たちが実際に介護を経験した方のお話を聞くと、休みを取れるかどうかが一番大きな課題で、介護される方には年金がありますし、正直なところお金はなんとかなるという感じでした。ですが、社長は「そうは言っても、いろいろな家族がいるだろうから」と、金銭を支援することも考えてほしいとおっしゃって。

町田:「介護支援手当」のような制度がある会社は、他にあるんでしょうか?

山根:いろいろ調べましたが、他社でこういった制度は見たことないですね。介護支援に力を入れているという大企業の制度は、法律で定める93日の介護休業を、さらに長期間取得できるようにしているのがほとんどです。しかし、この期間は多くの会社が無給です。さらに、1年後に職場に復帰して、仕事があるのか、できるのかという懸念もあると思います。オープンハウスグループの今回の制度は、「どうしたら働きながら介護と向き合えるか」というコンセプトを軸に設計しているので、働く上で出てくるさまざまなハードルに対処しようと、かなり手厚くしています。

――今年2024年10月からスタートする制度ですが、すでに申請している人はいるのでしょうか?

山根:制度スタートに先駆けて、2024年7月に介護相談窓口をまず設置したところ、ご相談が1件ありました。親が急に倒れたというご相談で、人事と面談していただき、会社として今対応できることをお伝えしました。ですから10月からは、その方が今回の制度を初めて利用されるかもしれません。

町田:会社がこのような取り組みを進めて行く一方で、現場の中で介護に直面された方が実際にいらっしゃった際、安易に退職ということを選択することなく、制度を使って働き続けようという風に意識を変えられるかは重要だと思います。

山根:そこはこれから啓蒙していくしかないですね。今日明日で何かを一気に変えられることは恐らくないので、時間をかけながら浸透させていくしかないと思っています。

オープンハウスグループの企業文化を残しながら、新しい環境をつくる

――働きやすい環境を整えているオープンハウスグループですが、もともとそのような社風だったのでしょうか? 変化を感じますか?

町田:私が入社したころは、会社としてもまだまだ未成熟で、一般的な企業でよくある制度くらいしか無かったように思います。それが、世の中の変化に合わせた新しい働き方や制度が導入されるようになりました。私のように10年以上この会社にいる人は「オープンハウスもいよいよここまで来たんだ」と、感慨深く思います。私も45歳になりますし、そろそろ親の介護が視野に入ってきています。そういうものを実感し始めている世代には、このような介護支援制度ができることはとてもありがたいです。「親の介護のために会社を辞める」という選択肢もなくなるので、会社にとってもプラスだと思います。

山根:私も中途で入社して、まだ2年半くらいになりますが、この間でも、世の中の変化に合わせて様々な制度導入をさせていただきました。一方で、この制度に限らず、私自身が制度を作る時に考えているのは、「この制度で失うものがあるかどうか」という点です。要は、オープンハウスグループの企業文化を壊しかねないものなのかという点や、従業員にとってはプラスでも業界日本一を目指す会社にとってはプラスなのかという点で、常に逡巡するところがあります。ですが、社長自身が本当に世の中にアジャストされているので、私たちが二の足を踏むことに対し、「時代も含めてこういう環境なのだし、制度を作るべきだろう」と判断をしてくださるところは、ありがたいと思っています。

町田:企業文化も勿論重要ですが、社内の変化についていけない人は、これからは厳しいと思います。実際、当社に残っている社歴の長い人たちは、変化に理解があって、社長と同じように「時代が変わったから変えていこう」という時代の変化に柔軟に変化対応できる人材たちですからね。

多様な従業員に柔軟に対応できる、使いやすい制度を目指して

――これから運用が始まる介護支援制度について心配事はないでしょうか。また今後の抱負をお聞かせください。

町田:今回の新しい制度の導入はメリットばかりだと思っています。ただ、心配事ではないですが、社長の性格から考えると、今後もっと支援が手厚くなる可能性はあるのではないかと思います(笑)。

山根:それはあり得ますね(笑)。世の中や会社が変化していく中で、大企業とベンチャー、それぞれの良いところを生かした、従業員にとってより使いやすい制度を、これからも考えていけたらと思っています。

オープンハウスグループの様々な人事制度の特徴は、いわゆる大企業の制度のようにガチガチに条件を固めるのではなく、ある程度の余白を持たせ制度設計がされているところです。それにより、多様な従業員に柔軟に対応できるわけです。ライフステージの変化とうまく付き合いながら、従業員が長く安心して働ける会社にしていきたいと思っています。