オープンハウス独自の営業支援ツール「AetA(アエタ)」開発の裏側に迫る(後編)
ソリューション事業部と情報システム部が共同で開発したオープンハウス独自の営業支援ツール「AetA(アエタ)」。マップ上から営業先の不動産業者の情報を確認できるだけでなく、名刺情報や行動履歴などを一元管理できるこのツールは、今やオープンハウスの営業担当者にとってなくてはならない存在となっています。そんなAetA開発の立役者となったのが、ソリューション事業部の奥井雄貴さんと、かつて奥井さんの下で働き、現在は情報システム部に所属する多田莞司さん。
記事前編ではAetA開発のきっかけやツールの特長についてお聞きしましたが、後編ではAetA開発にあたって特にこだわったポイントやリリース後の反響、今後のシステム活用に関する展望などについてお聞きします。
(2023年8月に取材)
記事サマリー
- 営業に必要なさまざまな情報を一元管理できる「AetA」
- 開発のポイントはできない人をできる人にする仕組み作り
- 若手社員の営業成績アップにも大きく貢献
この記事に登場する人
部長代理
奥井 雄貴
2014年入社。ソリューション事業部部長代理。米国留学中にMBA取得、議員秘書として働くなどさまざまな経験を経てオープンハウスに入社。AetA開発の発起人。
係長
多田 莞司
2018年入社。情報システム部所属。ソリューション事業部で営業や事業企画を経験した後、2023年から情報システム部に異動。ソリューション事業部時代、奥井さん直属の部下としてAetA開発に携わる。
目次
マメじゃない人を、マメな人にする仕組み作りに尽力
ーAetAの開発にあたり、特にこだわったポイントを教えてください。
もう一つこだわったのは、営業担当者に入手したデータをすぐにAetAに登録してもらえるような仕組み作り。名刺登録は当日中に行わないと翌日にはアプリがロックされてしまうような、そんな「圧」が強めの注意喚起アラートなどを出すようにしています。
奥井:なぜ、そのような仕組みを設けたかというと、営業担当者は営業情報をマメに管理できる人とそうではない人に分かれるから。営業には気合と根性も大事なのですがそれだけでは駄目で、長期的に見ると情報をマメに管理できる人の方が、成果も上がっていくんですよね。
やはり「お客さまがどういう物件を欲しているか」「他にどういう物件を持っているか」といった情報を日頃からマメに管理できていれば、マッチする物件が出てきたときに、すぐに営業活動にもつなげられるので。だからこそ、情報をマメに管理できない人をマメに管理できるような人にさせてしまうような、「やれない」人を「やれる」人に育てるような、そんな仕組み作りにはこだわりました。
ー情報の管理が大雑把だと、トラブルも招きやすくなりそうですね。
奥井:そうですね。不動産取引に関する細かい法律はたくさんあり、一つ見逃すだけでも、大きな事故に発展してしまう可能性があります。例えば、消防法に違反した建物を購入してしまった場合、火災が発生したときに所有者責任が問われる事態にもなりかねません。そういったリスクを見逃さないために、上の人たちが案件ごとに細かくチェックをしますが、やはり営業担当者レベルできちんと情報管理ができている状態がベストだと思います。
若手社員の営業成績向上にも貢献するAetA
ーAetAのリリース後、社内からはどのような反応があったのでしょうか?
多田:機能面に関しては良い評価が多かったのですが、当初多かったのは「パフォーマンスが悪い」といった意見でした。社内の営業担当者がAetAを一気に使い始めたことで、動作が非常に重くなってしまったんです。営業はスピード感が命なので、もう少し動作を軽くしてサクサク使えるようにしてほしいといった声が多く寄せられました。リリース後から現在に至るまで、細かいアップデートと改善を重ねてきたこともあり、最近ではパフォーマンス面は非常に安定していると思います。
一方で「よくここまで作り込みましたね」という声も多数いただいたのですが、何よりも実際の利用率が非常に高いという事実が、言葉以上にうれしい反応でした。特にここ2〜3年で入社してきた人にとっては、AetAがあって当たり前という環境になっているので、オープンハウスの営業ツールとして、もはやなくてはならないものになってきていることを日々実感しています。
ーAetAのリリース後、実際に営業成績が上がったなど、具体的に成果が表れてきている部分はありますか?
奥井:アプリやデジタルツールの利用に慣れている若手社員の営業成績が、特に伸びてきているのを実感しています。経験の浅い若手はなかなか金額が大きい物件を売ることが難しいのですが、億単位の物件でも以前より着実に売れるようになってきている。お客さまからいただいた名刺を余すことなくデータ化することで、以前より効率的かつ的確なアプローチを取れるようになり、営業の量も質も向上したからだと思います。そうした意味では収益的な部分でも非常に重要なツールになっているのではないかと。
やはり営業は「量」だと私は考えているので、どれくらい名刺を集めて、それをもとにしたデータ構築ができるかというところに全てがかかってくる。そうしたデータがようやく今、溜まってきたところなので、今後は成果が出ている人・出ていない人のデータをしっかり見ながら、ビッグデータ解析などを行なって、営業ノウハウの構築・共有などにも役立てていこうという、そんな動きが出ているところです。
そのためにも、営業担当者の皆さんに、さらにガンガンAetAを使い倒していただけたらありがたいですね。
多田:できる営業担当者のナレッジは属人化してしまいがちですが、そうしたナレッジを多くの人に共有して、底上げを図ろうというのは今後のAetAのデータ利活用において重要なポイントだと思っています。トップ層と下位層の営業成績に10倍くらいの開きがあったとして、下位層がトップ層の半分くらいのパフォーマンスを出せるようになれば、会社の業績も一気に上がる可能性を秘めています。
また結果が出ない営業担当者はどうしてもネガティブな考え方になってしまうので、「こうすれば成果が上がる、データも証明してるよ」という具体的な方法を提示できれば、早期離職の防止などにもつながるように思います。
営業のことも開発のことも、両方わかる人がいる強み
ーAetA以外で今後、他にどのようなシステム活用などを考えていますか?
多田:個人的には、業務効率化をさらに強く推進していきたいですね。例えば、文書データをOCR(光学的文字認識)で読み込み、解析した上でシステムに取り込むといった仕組みがあれば、事務作業に費やす時間が相当短縮されるはずです。
奥井:賃貸物件を例に挙げますが、原状回復工事などを行うと、工事業者から見積もりが送られてくるんです。見積もりの書式は各社バラバラなので、一つひとつ項目を確認しながら、オープンハウスの書式に落とし込んでいく必要があります。送られてきた見積もりをOCRで読み込み、オープンハウスの書式に自動転記できれば、業務効率は格段にアップしますね。
多田:最近のOCRは、かなり精度が上がってきていて、見積書くらいの内容であれば「業者番号」「見積金額」といった内容を、AIが識別してくれるところまで来ています。このレベルなら業務に実践活用できるのではないかと情報システム部でも期待を抱いて、いろいろとリサーチしているところです。
奥井:他にもジャストアイデアですが、ビルやマンションの共用部には掲示板が設置されていて、ゴミの出し方や工事に関するお知らせなどが貼ってあると思います。こうした掲示は現場に足を運んで人力で行なっていますが、掲示板を電子化できれば、端末からの操作でお知らせ事項を簡単に変更できたりもする。さらに、そこに企業広告などを流すことができれば収益化につながる可能性もあります。いつか実現したいなと思いながら、僕の頭の片隅に置いてあるプロジェクトです(笑)。
ー多田さんが情報システム部、奥井さんがソリューション事業部にいてお2人が連携を取ることで、今後さらにいろいろなことができそうですね。
奥井:営業の現場のことも、そしてシステムを作る側のこともわかる多田さんが情報システム部にいて「つなぎ役」になってくれることは、会社としても非常に大きな強みになると思いますし、より良いツールの開発にもつながっていくと思っています。今後も一緒に、いろいろなプロジェクトを走らせていきたいですね。
ー最後に、入社を希望する方に向けてお2人からメッセージをいただけますか。
多田:オープンハウスの開発環境としての魅力は、AetAのように大きな可能性を秘めたツールに対しては、大きな予算を出してくれること。またエンジニアリングを通して、会社のビジネスに貢献したいと思っている「ビジネス思考」があるエンジニアにとっては、この上ない環境です。
自社の事業に直結する課題がポンポン降ってくるので、自分の仕事が会社にどんな影響を及ぼすか実感を得やすく、やりがいも大きなものがあると思います。システムというものを通して事業に携わりたい方にとって、オープンハウスの情報システム部は非常に刺激的な環境だと思います。
奥井:私はオープンハウスの強みは、多様性にあると思っています。世間からは「営業力が強い会社」という風に見えているかもしれませんが、例え営業的なセンスがなかったとしても必要以上に怖がる必要はありません。やる気さえれあれば、そのような人の生きる道もきちんと模索してくれるのが当社のいいところであり、AetAもそれをサポートするツールの一つです。少しでも興味を持ってくれた方は、安心して飛び込んで来てもらえればと思います。
営業が苦手な人でも、しっかり結果を残せるようなツールを作りたい。そのような想いでAetAの開発に取り組んだ奥井さんと多田さん。ソリューション事業部とシステム開発部、今後も部署間の垣根を越えた密な連携を取りながら、どのように画期的なシステムやツールを開発していくのか、お2人の「協働」のあり方に要注目です。
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多田:一番こだわったのは、やはり各機能のデータ連携です。名刺データや案件管理データ、業者リストのデータといった登録データが全て裏側で複雑につながっているのですが、操作も複雑になってしまうと使い勝手が悪くなってしまうので、操作面はできるだけシンプルに、ユーザーファーストで使いやすいものを目指して作り込みました。