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事業を知る

自治体と東大、銀行と産官学金連携で挑む、群馬県・みなかみ町の地方創生プロジェクトに迫る

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オープンハウスは戸建住宅の販売や、ビルやマンションの販売といった事業のほかに、「地域共創」事業にも力を入れて取り組んでいます。現在、群馬県を中心にさまざまな地域共創プロジェクトが進行中。こうした地域共創事業を一手に引き受ける、事業開発部の横瀬寛隆次長と松岡由佳さんにお話を伺いました。
(2023年10月に取材)

記事サマリー

  • オープンハウスの地域共創事業を担う事業開発部
  • 群馬県・みなかみ町では産官学金連携プロジェクトを展開
  • オープンハウスならではの強みを活かしたさまざまな取り組みに従事

この記事に登場する人

  • 次長

    横瀬 寛隆

    2018年4月に中途入社。前職は設計事務所、香港系不動産デベロッパーに勤務。事業開発部の次長として、群馬県を中心とするさまざまな地域共創プロジェクトを率いる。

  • 松岡 由佳

    2022年4月に新卒入社。入社当時から事業開発部に所属、地域共創プロジェクトにおける宿泊部門を担当。みどり市のプロジェクトでは、入社2年目ながら責任者を任されている。

「町・人・仕事」の好循環を生み、地方を活性化させる

―オープンハウスの事業開発部とはどのような事業を手がける部署なのでしょうか?

横瀬:戸建事業やマンション事業といった既存の不動産事業とは別に、オープンハウスが取り組むべき新規事業を推進していくのが私たち事業開発部の役割です。現在は主に、地域共創事業やそれに付随したホテルリゾート事業などを手がけています。

現在、私と松岡を含め6名のメンバーがおりまして、外部の専門事業者とも協働しながらさまざまなプロジェクトを進めています。

―オープンハウスのような不動産企業が地域共創事業に取り組む理由は何でしょうか?

横瀬:当社は東京、名古屋、大阪、福岡といった大都市圏を中心にマーケットを展開していますが、こうしたエリアだけでなく地方にも可能性を拡大したいというのが大きな理由です。我々は「好立地」をひとつの売りにして、土地や物件を売買していますが、そうした好立地は必ずしも都市部のみの条件ではありません。地方ならではのカラーを生かした「好立地」は必ず存在すると考えています。

一方、少子高齢化などの影響で人口減少が進み、活気がなくなっている地方も多い現状があります。そこにオープンハウスがお力添えすることで、仕事を生み、人を増やし、町を活性化させていくような好循環を生み出せればと考えています。そのような「まち・ひと・しごと」の流れがうまく回るようになれば、地方の土地や物件にプラスアルファの価値を生み出すこともできる。そうした想いから、私たちは地域共創事業に取り組んでいます。

町、大学、銀行と連携し、廃墟化した旅館を生まれ変わらせる

―現在、群馬県の複数の市町で地域共創プロジェクトが進行中とお聞きしました。その代表例でもある、みなかみ町での取り組みについて教えてください。

横瀬:「産官学金連携まちづくり」と題して、オープンハウス、みなかみ町、東京大学、群馬銀行の4者が協働で取り組むプロジェクトになります。

基本的に地域共創プロジェクトは、町が抱える課題に対して我々事業者が何ができるかを模索し、課題解決を図りながら町の活性化を目指すものです。みなかみ町は温泉街として有名な町ですが、閉館した大型旅館の廃墟化という課題がありました。民間が保持している施設であるため、自治体もなかなか手を出せず、廃墟化した建物が放置されている状態が続いていたのです。

そうした課題に対して、オープンハウスが廃墟化した旅館を買い取り、土地や建物を利活用する提案を行いました。とは言え、外部からきた不動産企業が一方的に地元の建物を買い取るだけでは、地元の方々との亀裂も生まれかねません。地元の方々の声もしっかりと取り入れたプロジェクトとして育てていかなければ、地に足の着いた地域共創事業にはならないだろうという懸念がありました。

そこでお声がけしたのが、東京大学大学院工学系研究科の都市デザイン研究室でした。全国各地の都市づくりやまちづくりについての研究を行っている都市デザイン研究室の専門的な知見を借りて、みなかみ町に関するさまざまな調査を行い、そこで収集したデータや地元の人々の声をもとに、プロジェクトを進めていく体制を構築しました。

―具体的にどのようなことを行っているのでしょうか?

横瀬:廃墟化した旅館の取り壊しを行うにあたって、少し変わった手法を用いました。旅館の所有者からみなかみ町に建物を寄付してもらい、オープンハウスが企業版ふるさと納税を通じて取り壊し費用の半分を負担。もう半分は観光庁の補助金制度を利用することで、町側もオープンハウスも取り壊しにかかる費用負担を最小限に抑えることができました。

また、当初は買い取った建物はすべて壊して広場などにしようと考えていたのですが、建物の使える部分はできるだけ再活用するプランを取ることにしました。町の歴史ある建物を可能な限り残しつつ、新しい風を吹き込んで、観光客を呼び寄せる魅力的な場所に生まれ変わらせる予定です。

松岡:2022年10月には、廃墟を活用したマルシェを実施し、町内外から多くの人が集まってくださり、大きな手応えを感じました。2023年10月にはその第二弾も開催し、こちらも反響を得ています。今後も地元の皆さんとしっかり連携を取りながら、地域に根付いたイベントに育っていけばうれしいですね。

関連サイト:みなかみ廃墟再生プロジェクト : 東京大学都市デザイン研究室

オープンハウスならではの強みと知見をまちづくりにも活かす

―同じくみなかみ町の藤原地区・石倉地区でも別のプロジェクトが進んでいると聞きました。

横瀬:そうですね。藤原地区では、もともと県や地元企業から成る第3セクターが運営していた「宝台樹(ほうだいぎ)スキー場」の再生事業を進行中です。このスキー場は10億円ほどの負債を抱え、経営存続がなかなか難しい状況でした。ただ、観光地としてのスキー場がなくなってしまうと周辺の宿泊施設なども打撃を受けてしまい、最悪の場合地区ごと消滅してしまう。そこでオープンハウスが経営を引き継ぎ、2021年から経営改善に取り組んでいるところです。

Omiaiリフト

松岡:私の記憶に残っているのが、入社して初めて携わった「デカイ虫かご」という夏の親子向けイベントです。1万匹ものカブトムシを、大きな虫かごに見立てたエリアに放って、自由に採取するイベントで、県外からもたくさんの親子連れが参加してくださいました。

こちらもメディアへの露出が多かったのですが、来る日も来る日もマスコミ各社へのPRに奔走する先輩の姿を見て「仕事の現場での泥臭い努力はこうやって結ばれるんだ」と実感した初めての経験でもありました。

デカイ虫かご

―石倉地区ではどのようなプロジェクトを行っているのでしょうか?

横瀬:石倉地区では「別荘ホテル」の分譲を進めています。簡単に言うと、「シェア別荘」というコンセプトです。別荘は年に10日ほどしか使われないことが多く、所有していてもシーズン以外は持て余している人も多い。そこで、365日のうち10日間とか30日間とか、必要な日数分の権利を購入できるようにし、空いている日はホテルとして運用する仕組みです。

こちらはホテル系のベンチャー企業と組んで2023年8月に販売をスタートさせましたが、販売開始後約2ヶ月ですでに数棟が売れていて、手応えを感じています。

NOT A HOTEL MINAKAMI
NOT A HOTEL MINAKAMI

地元の人たちの同伴者として、熱意を伝え続ける

―みなかみ町でのさまざまなプロジェクトが現在も進行中ですが、これまでの過程で印象に残っていることは何ですか?

横瀬:廃墟旅館を取り壊した際、近隣住民の皆さんから「川の音がよく聞こえるようになった」「風通しがよくなった、ありがとう」といった声をいただいたのが印象に残っています。地元の人々の暮らしに少しでも良い影響を与えることができたのかな、と非常にうれしかったですね。

松岡:私はやはり、スキー場での「デカイ虫かご」イベントです。入社して初めての仕事が、1万匹のカブトムシを全国から仕入れることで、これはなかなかできない経験だったなと(笑)。日本中の業者に電話をして問い合わせたり、自分で考えた看板や虫かごを発注したり、不動産会社らしくない仕事ではありましたが、多くの人がイベントを楽しんでくれている様子を見て、本当に感動したのを覚えています。

―オープンハウスとしても前例のないプロジェクトの数々ですが、お2人が地域共創プロジェクトに取り組む上で、大切にしていることは何ですか?

横瀬:地域にはさまざまなステークホルダーがいらっしゃいますから、そうした方々に日々こまめにご報告したり、ご意見をいただいたりすることを怠らず、同時にこちらの熱意も伝え続けることが重要だなと。

地元の活性化に際して「昔やってみたけどダメだった」「長年、改善しようとしているけれど無理だった」と、無力感を感じている人も少なくありません。「どうせ、今回も…」と諦めムードに決して陥らないよう、「こうすればできます!」と私たちが力強く前向きに発信することの大切さを学びました。そうしていくうちにだんだん、私たちの味方になってくれる人の数も増えていくんだな、と。

松岡:加えて、私たちはあくまで「地元に足を踏み入れさせてもらっている立場」だということを忘れないことですね。東京の不動産会社が外からやってきて、自分たちの地元で何か新しいことを始める。これって、地域住民の方々からすると、すごく心理的なハードルがあると思うんです。だからこそ、心の壁ができないような伝え方や振る舞い、コミュニケーション部分には人一倍気を付けています。

「この町にはこんなに素敵な魅力があるんだから、一緒に盛り上げていきましょう!」と、まずは私たちが同伴者として、その町の魅力やポテンシャルを熱心に伝えなければ、地域共創プロジェクトは動いていきません。

横瀬:温浴施設など観光客が回遊できる施設を充実させたり、レストランなどの食分野を強化したり、みなかみ町における今後の魅力的な仕掛けづくりもいろいろと考えています。町の魅力やポテンシャルをさらに引き出すお手伝いをしながら「まち・ひと・しごと」のさらなる循環を、これからも生み出していきたいですね。

関連サイト:オープンハウスグループ 地域共創プロジェクト

オープンハウスだからこそ実現できる「地域共創」を目指して

多くのステークホルダーの協力と理解を得ながら、みなかみ町にて進めている「産官学金連携まちづくり」。今後の展開にも要注目です。記事の後編では、群馬県みどり市で進行中の別プロジェクトの詳細や、オープンハウスが地域共創に取り組むあらためての意義について、引き続き横瀬さん、松岡さんに語っていただきます。

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