障がい者雇用でも「日本一」を目指す。オープンハウス・オペレーションズの挑戦とは
オープンハウスグループの障がい者雇用を担う、株式会社オープンハウス・オペレーションズ。2024年9月に設立されたばかりの同社は合理的配慮に基づいた環境整備や、働くメンバーに合わせた独自の制度設計など、さまざまな取り組みを推進しています。そんなオープンハウス・オペレーションズのオペレーションセンター部長を務める市川友和さんに、障がい者雇用のあり方やそこにかける思いなどを聞きました。
(2024年11月に取材)
記事サマリー
- 障がい者雇用を推進する株式会社オープンハウス・オペレーションズ
- ハード面とソフト面の両方から働きやすい職場環境や制度を作っていく
- 障がいの有無に関わらず、誰もが活躍できる雇用のあり方を模索
この記事に登場する人
市川友和
株式会社オープンハウス・オペレーションズ オペレーションセンター部長。大手小売企業、大手サービス企業を経て2022年に中途入社。オープンハウス・オペレーションズの立ち上げに携わり、障がい者雇用を企業の力に変えるための制度設計や合理的配慮に基づいた環境整備等に取り組んでいる。
目次
さらなる事業成長を見据え、障がい者雇用に特化した法人を設立
―はじめに、株式会社オープンハウス・オペレーションズの事業内容について教えてください。
株式会社オープンハウス・オペレーションズは、オープンハウスグループの障がい者雇用を担う、グループ100%子会社(特例子会社認定申請中)です。現在、グループ全体で障がいを抱えたメンバーが約130名働いていますが、そのうち約110名がオープンハウス・オペレーションズに在籍しています。
事業内容は、グループ内の営業部門と間接部門のサポートがメインです。各種書類の作成から、基幹システムへの情報入力、CADを使用した図面作成、ホームページ掲載物件情報の変更有無の確認まで、80以上の業務を受託しています。オペレーションセンターとして、東京都八王子市、神奈川県横浜市、千葉県柏市の3拠点を設けていますが、事業内容はどの拠点も同一となっています。現在、埼玉県内での新拠点設置の計画を進めています。
―組織として、どのようなミッションを掲げているのでしょうか。
当社の最大のミッションは、オープンハウスグループの「戦力」として、企業価値の向上に貢献することです。受託業務の件数増加や品質向上によって、営業部門や間接部門がメイン業務に専念しやすい環境づくりをサポートできれば、オープンハウスグループが掲げる「総合不動産会社日本一」という目標にも大きく貢献できると考えています。
―会社設立の経緯を教えてください。また、市川さんは、設立にどのように携わったのでしょうか。
2024年4月に法定雇用率(従業員に占める障がい者の割合)が2.3%から2.5%に引き上げられました。オープンハウスグループの従業員数は年々増加しているため、それに合わせて障がい者雇用数も増やしていかなければいけません。オペレーションセンターは、もともと社内の一部署として存在していましたが、この先の事業成長や人員拡大を見据えた時に、独自の環境や制度を整えていく必要があると判断し、法人化へ向けて動き出しました。
私は事業責任者として、人事部や総務部、法務部、経営管理部などさまざまな部署と連携しながら、この法人化プロジェクトを推進。2024年9月に、株式会社オープンハウス・オペレーションズの設立に至りました。
―オープンハウス・オペレーションズにおける、市川さんの業務内容を教えてください。
簡単に言うと組織を縁の下から支えるのが役割です。主な業務内容は、メンバーのサポートや評価はもちろん、環境整備や制度設計、グループの各部門から業務を切り出してもらうための営業活動、本社への定期的な報告、現場の課題解決に向けたさまざまな提案など。そのほか、オープンハウスグループの障がい者雇用の取り組みを知ってもらうため、社内外への発信も積極的に行っています。
―障がい者雇用の実績についてもお聞かせください。
2024年11月には、東京都から障がい者雇用に関する取り組みが優良であると認められる企業に授与される「障害者雇用エクセレントカンパニー賞 東京都知事賞」を受賞しました。
また、2024年6月時点でグループ全体の障がい者雇用率は2.75%、定着率は93.8%と、いずれも平均を大きく上回っています。当社は、精神的な障がいを抱えるメンバーが約7割を占めますが、そのような企業の多くが80%程度の定着率にとどまっています。定着率の高さは当社の強みなので、今後も維持できるよう、働きやすい環境を整えていきたいです。
「障がい者雇用にも手を抜かずに取り組んでいく」という姿勢
―市川さんはオープンハウスグループ入社までに2社経験されたと聞きました。これまでのキャリアについて教えてください。
大学卒業後、学生時代からアルバイトをしていた小売大手にそのまま入社しました。販売や仕入れを経て、広告、販促、集客といった業務に携わり、子会社の社長も経験。企業が成長していく様子を肌で感じながら、約20年勤めました。
そこで1回目の転職を経験します。私の3人の子どものうち、次男に重度の障がいがあることがわかり、仕事への向き合い方を考えるようになったことがきっかけでした。モチベーションだけで仕事をするのではなく、自分が携わる意義を見出し、ブレない軸を持って仕事に向き合いたい……そう考えていた時に、転職サイトで大手サービス企業から「当社の特例子会社で責任者のポジションに就きませんか?」とオファーを受けたんです。障がい者雇用は、どの業界においても未成熟の分野であり、また子どもの将来を考える上でも私にとって重要なテーマ。直感で「これだ」と思い、転職を決意しました。
2社目の企業では約2年半勤務。業務を受託するためにグループ内営業や、メンバー管理、新しい制度の起案など、まさに現在の業務の基盤となるような仕事をしていました。
―そんな折、オープンハウスグループに転職したのはなぜでしょうか。
オープンハウスグループに1社目の小売大手でお世話になっていた方がいて、声をかけていただきました。当時のオープンハウスグループは、障がい者雇用が未整備の状態。人材をどのように採用するか、採用した人材に戦力になってもらうにはどうすればいいかなど、課題が山積みでした。
正直、オープンハウスグループについては「不動産会社」という認識程度でしたが、面接で荒井社長や若旅専務から「障がい者雇用にも手を抜かずに取り組んでいきたい」という熱い思いを直接伺い、非常に心を動かされました。「この会社なら、障がいのあるメンバーが長く働ける環境を実現できる」と確信したんです。
変化に耳を傾け、小さな声も遮断しないよう工夫する
―環境整備や制度設計に関して、オープンハウス・オペレーションズでは具体的にどのような取り組みをされていますか。
働く環境に関しては、ハード面とソフト面の両方の整備が必要だと思っています。ハード面では、バリアフリートイレなどは当然に、ユニバーサルデザインの複合機や自販機の設置、また各種障がいに配慮した機器の導入も推進しています。
ソフト面では、定期通院のための月1回の特別休暇(半日有給)制度の導入や、障がいに配慮した柔軟なドレスコードの導入、さらに公認心理師や臨床心理士、精神保健福祉士など専門資格を持つサポートスタッフの常駐による、定期面談やスポット面談の実施など、幅広いサポート体制を整えています。
雇用形態については、まず契約社員からスタートしますが、約2年間安定して勤務できれば、正社員として登用します。また、マネジメント層も障がいのあるメンバーが担うなど、段階的にステップアップできる評価制度を設計しています。年功序列ではなく、成果に基づいてポジションや給与が上がる仕組みは、グループの他部門と同様です。
―人によって、難しいことやできないことが変わってくると思います。人員配置については、どのように決めているのでしょうか。
障がいの種類に応じて機械的に業務を振り分けるのではなく、面接で経歴やスキル、性格、キャリアプランなどを伺ったうえで、業務にアサインすることを重視しています。もしその業務が向いていなかったり、メンバー間の相性が合わなかったりした場合は、新しい仕事にトライしてもらうことも可能です。
―「業務にうまく対応できない」「メンバーとのコミュニケーションがうまくいかない」といった悩みをすくい上げる仕組みはありますか?
メンバーには毎朝出社したら、「ヘルスログ」という体調管理シートに、その日の体調や睡眠時間、食事内容などの項目を入力してもらっています。これにより、心身の変化をキャッチできますし、「サポートスタッフに話を聞いてほしい」といった要望も汲み取れます。調子が優れない人がいたら、サポートスタッフが声をかけて、面談を行うこともありますね。
また、匿名で投稿できる「意見箱」を用意しています。寄せられた意見や質問には、全員が参加しているチャットで回答をします。会社の考えを知ることで、落ち着いたり、すっきりしたりする人もいるようです。寄せられた要望にはできる限り応えるよう心がけており、小さな声を見落とさないように工夫しています。
▼建築技術職への応募フォームはこちらから
間接部門賞の受賞をきっかけに、業務の受託につながった
―オープンハウス・オペレーションズは、組織としての取り組みや実績を評価され、2024年10月に「間接部門賞」を受賞しました。改めて、市川さんが目指している「障がい者雇用のあり方」とはどんなものでしょうか。
障がい者雇用で採用した人材も、当社に貢献する重要な「戦力」であると捉えています。障がいの有無に関わらず、給料をもらって働く以上メンバー全員が全力で仕事に取り組む必要がありますし、そのための支援や環境づくりは私自身も全力で行いたいと考えています。
先日、表彰式の場で「私たちオープンハウス・オペレーションズのメンバーも、オープンハウスグループという同じ船に乗り、オールを漕いでいる一員であること。そして、日本一を目指してともに頑張る仲間である」という内容のスピーチさせていただきました。改めて言葉にすると胸が熱くなり、思わず涙腺が緩んでしまいましたね。
嬉しいことに、表彰式後には「こういった仕事をお願いできますか?」という問い合わせを他部署からいただき、新たな業務の受託につながりました。また、各拠点で働くオープンハウス・オペレーションズのメンバーからも「ここで働けて良かった」など喜びの声が届き、私自身も大きな励みとなっています。
―今後、オープンハウス・オペレーションズで取り組むべき課題や、実現していきたいことはありますか。
制度設計と組織強化は、当社の重要な課題です。「頑張れば上に上がれる」と希望を持ちながら働けるよう、成果を出したメンバーをきちんと評価していきたい。そのために、評価制度や給与制度をより明確にし、整備を進めていきます。また、現在は中途採用のみですが、今後は新卒採用にもトライしていきたいです。
―どのような人がオープンハウス・オペレーションズで活躍できますか? 障がい者雇用枠で入社を希望する方、サポートグループのスタッフ、それぞれに対して求めるものを教えてください。
障がいのあるメンバーを採用する際の基本条件は、安定して勤務できること、自己理解・他者理解があること、そして周囲とのコミュニケーションが取れることです。身体・精神を問わず障がいを抱えているメンバーとお互いに協力し合える人、そして他責思考ではなく、自分の言動に責任を持てる人にぜひ応募していただきたいと思っています。また、当社にフィットするのは、課題に直面した時に、解決や改善に向けて自ら行動できる人です。そういう人は、入社してすぐに活躍できると思いますし、マネジメント層も目指せるでしょう。
サポートグループでは、専門的な知識はもちろん、日々発生するさまざまな事象に対して、柔軟に対応できる方を求めています。「障がい者雇用はこうあるべき」といった固定観念は必要ありません。会社の成長スピードに合わせて、オープンハウスグループならではの障がい者雇用のあり方を一緒に考えていただける方と働きたいと思っています。
オープンハウスグループらしい障がい者雇用のあり方を模索する
働きやすい環境や昇進制度の整備、社員の日々の体調管理など、障がい者雇用においても独自の取り組みを展開しているオープンハウス・オペレーションズ。それら取り組みの一つひとつから、「障がい者が活躍できる環境においても日本一を目指す」というオープンハウスグループらしい成長意欲が感じられました。障がいの有無に関わらず、戦力として企業価値の向上に貢献していきたいと考える人材をオープンハウスグループは求めています。